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ボイトレの実例第9話

 

 

ボイトレの実例第9

 

 今日のカラオケテーマは「こぶし」である。

 こぶしは音を一瞬上下に震わせるテクニック。音程は無視しても構わない。

 一方、それに対しビブラートは一定の間隔で揺らす方法。「一瞬」と「一定間隔」の違いを意識して練習してみよう。

 

ところで、この「こぶし」はNoriの趣味の一つであるモーグルスキーと相通じているところがある。

 モーグルスキーの「モーグル」とはコブを意味する。

コブ斜面は、平らな急斜面を「瞬間的な」ショートターンで何回も繰り返し、練習用コブ斜面を育て上げる事から始まる。

 この時、雪面は規則正しくえぐられて徐々にコブが育って行く。

 

 このコブの育て方が「こぶし発声」の仕組みその物だ。

 スキー板の代わりを息に、柔らかい雪面の代わりを筋肉粘膜に置き換えて同じ操作、つまり「息」を瞬間的にえぐっていくイメージ。

 カラオケでおきる「こぶし」表現の参考になれば。

 

 

 そして、スキーモーグルは、どん底へ激しく落ち込んで、どん底を更にえぐり込んでいき、それを瞬間的に何度も繰り返し、えぐりこまれたところはどんどん深くなっていく。そんな過激なスポーツである。

 Noriはこの時、三種の神器(脱力・体軸・捻転力)で、雪面のどん底君にちょっかいをかけ、えぐりだし増築のお手伝いをして出て行く。

 これが発声時の「こぶし」に酷似している。両方とも下半身の腹式呼吸が基本動作である。

 

B「私、スキーやった事ないから、全然わかんない。

スキーと声作り、よく似てるらしいけどスキーは黙ってやるんでしょ。どこが面白いのよ。」

 

N「馬鹿言ってんじゃねえよ。

スキー板のずらし具合でいろんな声色奏でるぞ。

『ズズ―ッ』、『シュワァ』、『シュンシュン』、『サッサッ』…

板の操作次第で飽きる事のない音色に満ちあふれている。

摩擦音による発声の仕組みもボイトレと同じだよ。

スキー上級者ほど滑走音の聞き心地が素晴らしくなるのもカラオケと同じだもんね。」

 

B「あっそういう事なの。スキーに声が出るなんて想像できなかったわ。

その内スキー君にヨーデル聞かしてもらおうっと。」

 

今日の課題曲は

石原裕次郎 北の旅人

~~~Binco歌唱中~~~

Bincoの採点参考値87点 こぶし6点 ビブラート52点)

 

NBincoは、こぶしがちょっと苦手だね。

せめて二けたの得点めざせよ。滑らかな声なので、こぶしがしっかり参加し始めると、表現力ポイントがアップして90点越えが見えてくるぞ。

縄跳びをする時のアップダウンを、息にやらせるといいかもね。」

 

B「息で縄跳びするってよくわかんないわ。腰を上下させればいいの?」

 

N「腰を上下させるのは、明らかに筋肉運動だよね。筋力は0が理想なので、その行為はアウト。

縄跳びを続けると息が苦しくて「はぁはぁ」と言うよね。この縄跳び声を意識するといいかもね。」

 

B「なるほど声の息に注目すればいいのね。

息でコブを作るって言うのは、柔らかい粘膜を息で波状に波打たせる感じって聞いたことあるわ。」

 

N「発声中粘膜を意識するのは、とても素晴らしい。柔らかい新雪(粘膜)に働きかけるスキー板(息)が摩擦で雪のうねりを作りに行くイメージかな。」

 

B「砂漠が風で波状になるイメージね。

風のある自然の中では、砂漠も海も波になって安定するのね。人間が作った都会の出来栄えは、角ばっていて滑らかさは全然ないわね。」

 

N「波は円弧の一部だし、雨粒や宇宙の星々は球になって安定している。

星の最後の姿ブラックホールも超高密度の球体(点)になって最後を迎える。

この究極点は、宇宙の誕生ビッグバンを引き起こす卵となって、そこから誕生した銀河の中にある太陽系は、平べったい円盤状になって安定している。

何千億年で一回の宇宙呼吸も、一秒で一回の人体呼吸も自然の仕組みに変わりはないのさ。

球と円と円弧の組み合わせから出来ている事に気が付くと、呼吸との取り組みがスッキリするんじゃない?」

 

B「でた~ぁ!Noriの理系オタク。私今でも地球が丸いって信じてないわ。

体の中に平べったい円盤なんて何処にあるのよ?でも左右の肺は球で出来ていそうね。

横隔膜から下の、下腹部は球体と思ってもいいかな?そうすると、腹部を縦に真っ二つに分けると、その隙間は円盤かもね。」

 

N「おっ、気が付いたね。腹部の円盤状の隙間は、息の抜け道。

息の流れに応じて、このスキマの厚みが変化して発声を調整している。

この腹部の円盤状スキマは、声帯の小さなスキマと同じ役割を果たしている。

だから大きな腹部のスキマの働きは自動的に声帯の小さなスキマの変動を誘発してくれる。従って喉の声帯筋を直接いじる必要は全く無い。

即ち腹式呼吸を行えば、のどの呼吸は無視しても構わない。」

 

B「そうすると、腹式呼吸の息の出入口は、肛門がいいポジションね。お尻で呼吸するのに慣れなきゃあね。本物が出そうで心配だわね。」

 

N「腹式に慣れると、息を閉じ込める事にも慣れてくる。本物にも我慢強くなるから心配ご無用。

特に、「こぶし」練習は効果的だぞ。息を吐く時は、柔らかい風船を膨らませる時の球体をイメージするといいかもね。」

 

B「ふわっと膨らむ、耳障りのいいビブラートだと、カラオケのDAM Ai採点のコメントでほめられた事あるけど、その時の呼気は球の様に丸かったのね。Bincoが死ぬ時は、〇coになっちゃうのね。何か楽しみだわ。」

 

 

N「Bincoのビブラートは折り紙付きだ。その調子で今一歩の「こぶし」を捕まえろ。

「こぶし」は、パワー系の操作なので、完璧な腹式動作を追求した方が近道だと思うよ。

球体はパワーを閉じ込める最適の入れ物だからね。Bincoは〇coの足元にも及ばないって事、よく解かってんだろうな。」